2023年、主にカーボランダム(*)という銅版画技法で制作された、津上みゆきによる10作品。
大きな5作品は草や花、そして小さな5作品は風景、共に身の回りで目にした景色が描かれている。
カーボランダム技法を用いるにあたり、津上のペインティングやドローイングに見られる自由でのびやかな筆触を引き出し、同時に堅牢な版を作るため、描画材やその用い方を数多く試して実現に至った。制作方法は、それぞれ最初に銅版にエッチングで線描し、その上から筆や指を用いてカーボランダムの描画を繰り返して版を作り上げた。
日々描かれているスケッチなどを元に制作されたが、使ったことのない素材に触れることで画面はそこから別の広がりを見せ、ペインティングや今までに制作した版画における津上作品のカラフルさとは対照的に、絵の骨格を表すようなモノクロームの画面が展開している。また、とても厚い紙に刷られたその画面はカーボランダムによる強い凹凸も現れ、モノクロームの世界により深みを加えている。
そして1作品のみ、樫の木の木目が背景として用られた。
2024年4月 津上みゆき 展「欠片、植物、人の場所」@ANOMALY にて発表。
*カーボランダム技法:技法としては1960年代にアメリカで生まれ、特にミロ、クラーベ、タピエスなどスペインの作家に好んで多用された。カーボランダム(炭化ケイ素)という、サンドペーパーの研磨剤として用いられている非常に硬い粉を接着剤などに混ぜたり振り掛けて銅版に固着させる。筆触が銅版の上で立体的に残り、その形が刷りとられ、そしてカーボランダムの粒子の細かさによって、明暗が変化する。