深澤雄太
Yuta Fukazawa
深澤雄太は、東京藝術大学の油画を卒業し、本格的に作家としての道を歩み始めた。
彼のもつ破壊的な潜在能力には計り知れないものがある。
彼の作品を初めて東京藝大の学祭である藝祭で見たときの衝撃はハッキリと覚えている。
いわゆる「色彩の天才」だと思ったのだ。
深澤雄太は倍率約20倍という超難関の東京藝術大学の油画を現役で一発合格した逸材であるのだが、その天才ぶりはそれだけではおさまらない。
彼の作品のモチーフはどこにでもある何気ない日常の風景なのだが、彼の腕にかかると鮮やかな色彩に変化してしまうのだ。
まさにマジシャンである。
白黒写真の上に人工的に色を付けた1960年代の総天然色のような味わいがある。
それは実際には存在しない色合いであり、深澤雄太のフィルターを通してでしか描かれない色彩の世界だ。
そこにはおそらく彼の知らないノスタルジーが潜んでおり、その世界をあたかも知っているかのように描き出すところは天賦の才能だとしかいいようがない。
また彼の筆のタッチも、絵具をたっぷりと使って大胆に描き上げることで、どこにでもある風景を見事に引き立ててくれる力強さがみなぎっている。
どんなにありふれた風景も名画のように鮮やかに200%の輝きをもって描き出す彼の手にかかれば、今後彼が作っていく新しい世界がどのようになるのか期待をしてしまう。
キャンバスに油絵できちんと描けるアーティストとして今後は新境地を開拓していくのだろうか、または全く違うタイプのアーティストに変化するのかもしれないが、それでも彼の藝大時代の初期作品を今のうちに持っておくことの重要さは言うまでもない。
日本から飛び立つ天才のこれからを占う意味でも、彼の才能に賭けてみたい気になってしまうのだ。
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