大槻は南米数ヶ国の旅をした経験があります。それは貴重な体験で大きなカルチャーショックだったと言っています。陽気なブラジルや閉鎖的なボリビア、定石どおりのハッピーな国民性や自然の雄大さ、光の色のまぶしさを感じてはいますが、当然ですがどこへ行っても人の暮らし、つまらない日常があることにはわずかな憂鬱感を抱いたそうです。その辺りが大槻らしさ、相変わらずの白みがかったトーンは南米の明るい人々のイメージとはかけ離れていますが、いままで通りの彼女の作品に大らかさや雄大さが加わったように感じます。しかしその根底にはやはり陽気な雰囲気の中でも乗り切れない人の心の複雑さが表現されています。それは進化や向上心の糧かもしれません。