本作は建築漫画家芦藻 彬(あしもあきら)と美術家サカイケイタによるコラボレーション作品です。本シリーズは全9枚あります。今回は選定して1ページを出品いたします。ゲシュタルト心理学の図と地の問題を用いて、見る行為と形(フォルム)の本質についての問いを提起するシリーズです。
私は小学生の頃から漫画は絵本のように楽しむことが多くあった。キャラクターのセリフを読むことなく擬音語や描写からストーリを予想して読んでいた。そのため読むということよりも眺める感覚が漫画にはある。そんな眺めものとしての漫画で楽しめるところは黒く印刷された描写ではなく余白のリズム性である。多くの人は意味を主格に情報を読み取るため黒い線に注目をすることが多いかもしれない。しかし私は図と地を反転させた世界を好む。日常の中でこのような認知の偏りを大人になって気づいたことから周囲に中央がある関係性でものを観察していた状況下にいることを知った。
読むこと、見ることが曖昧になる時私たちは見える世界について何を考えるだろう。
何を見ているのか。
何が見えているのだろうか。
自己の認知について向き合うと見える世界の不確かさに気付かされる。
サカイケイタ
漫画について:
SCISSIONE/分裂
イタリア・ヴェネツィアの建築家カルロ・スカルパによる建築群"LA TOMBA BRION”。この世とあの世をつなぐこの建築を彷徨するものたちは、絶えず自らの影を追う。建築は合体と分裂を繰り返し、ものたちもまた合体と分裂を繰り返す。選択の自由は常に保たれ、その瞬間は見るものに委ねられている。作中のものたちと同じように。
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