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伊藤咲穂

Sakuho Ito

伊藤咲穂

島根県出身の伊藤咲穂は幼少のころから自然が豊かな田舎で育ち、その中で樹木の葉が枯れて土へと還っていく姿を当たり前のように目にしていた。 その現体験があるからこそ、伊藤が武蔵野美術大学二年のとき富山県五箇山で訪れた和紙工房で和紙の原料である楮(こうぞ)に触れたことをキッカケとして日本のもつ伝統文化を追い求めることにつながったのだろう。

伊藤咲穂は大の研究好きである。 ハマってしまえば、何でも自分でやってみないと気が済まないのであろう。 また発明家気質でもあり、幾度の研究を通して新たな発見をしていくタイプでもある。 和紙にハマった彼女は自分で手漉きをすることに挑戦し、さらに金属の鉱物をあらかじめ混ぜた錆和紙(さびわし)を作ることを考案したのだ。 楮(こうぞ)や三椏(みつまた)といった和紙の原材料に金属を加えることで、どのように錆が生成されるかを常に研究しながら制作に励んでいるのだ。

地元島根県に戻り、和紙の手漉きを長期間学ぶこととなり、そこで徹底的に和紙のもつ味わいを研究しつくしたが、それでもその探求心はおとろえることはない。 和紙に新たな世界観を送り込む「錆和紙」は、島根県の海辺で採集した砂鉄を和紙に漉き込 むことによって生まれている。

この錆和紙には日本伝統の文化からくる茶道の「侘びと寂び」の精神をも表している。 茶道の人と自然との共生した生活様式である「侘びと寂び」を感じることは、現在の日本の環境問題を改めて考えなおすことにもつながっていく。 自然環境と人間が、生態系を維持し保護するためにどのように共存していけるかについてその解を迫られていることを彼女の作品を見ることで感じる人も多いだろう。

彼女が作る創造物は永い時を経れば朽ちはて、いつかは土へ還っていくことになる。 そのような自然の理を作品を通して「美」として見せているのだ。

だからこそ伊藤の作品には島根の自然の持つ「静けさ」と、その自然が朽ち果ていていく「美」の姿を同時に感じてしまうのだろう。

今後も日本の文化を自然の中から問い直していく意欲作に期待ができる、真打ちの登場だ。

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