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佐藤しな

Shina Sato

佐藤しな

佐藤しなを初めて知ったのは、Twitterを流れてきた一枚の画像だ。
巷に氾濫するイラストとは一線を画す異質な存在。
ダイヤモンドの原石を見つけた、そう確信した。

作品は人物と背景で構成されており、それらの間にある境界は曖昧で、独特な世界観を生み出している。
見方によっては、人物も背景に溶け込み、とある生活のワンシーンを切り取ったかのようでもある。それでいて描かれる人物は確実にその一瞬の主人公であり、その世界の中心として圧倒的な存在感を放つ。

中心的な要素を抽出して強調するのではなく、そこに存在するもの、見えるもの、それらのすべてを描く。これは並大抵の技術や気力で出来ることではない。
さらに佐藤しなは、それらを全て自らの手で描き出している。化粧品売り場の商品も、冷蔵庫から溢れる食品パッケージも、ゲームセンターに並ぶ景品も、一切トレースなどをせずにコツコツと筆を走らせ、一つ一つのモチーフを一から画面上に生み出すのだ。

一方で、作品のテーマがそのような数えきれないほどの細かなモチーフの中に埋もれることはない。佐藤が作品を通して発信するメッセージは非常に明確だ。
現代を生きる若者の不安や葛藤、ふとした瞬間の心細さ、そして木漏れ日のように差し込む一筋の希望が作品に込められている。

佐藤しなが本格的に作品の制作を始めてからまだ1年ほど。この短期間でここまでの技術を身に着けたというのだから、それもまた驚愕である。

慶応義塾大学法学部を4年生で中途退学し、現在はイラスト・アートの世界に没頭している。
圧倒的な集中力と根気強さが成す技術の高さだけでなく、世界観を構築する力も目を見張るものがある。今後どこまで化けていくのかが楽しみでならない。

佐藤しなは、この先必ず目の離せない作家になる。その兆しは明瞭だ。
今のうちにその才能を買っておくべきだろう。