この作品にはリキテンスタインのトレード・マークの水玉模様が見当たらない。しかし新しい要素がいくつも登場している。右上と右下の模様は76年の「エンタブラチュア(破風)」シリーズつまりニューヨークのクラシックな建築の部分、その隣緑色は板目の表現、最上端の赤黄のギザギザは80年の「アメリカン・インディアン」のシリーズに登場といった具合。左上のアールデコ調の太陽とその下の歯車などメカニカルなモチーフは60年代からのものだ。右下の三色はフランス国旗を思わせるが89年の「ボビー・ケネディ」の背景に使われている。この版画が収められている版画集『アメリカ第三世紀』は建国200年記念に出版されたものだが、リキテンスタインはアメリカの未来と自分の作品の将来とを象徴しようとしたのかもしれない。東京アメリカン・センターのオフィスに昔からかかっているのも当然だろう。要素は込み入っているがデザイン性が高くリファインという言葉がぴったりだ。どんな部屋もこの1点でモダン・リビングに様変わりするに違いない。