紙の上で踊る不定な形。一瞬、CGかと見間違えるほどの繊細な筆致やリズミカルな線は、アーティストであるカンノサカンが感覚のままに筆を走らせた形跡です。これは、「視覚のための音楽」と考えられていて、構図、色、線とカタチ、そのひとつひとつが音楽の旋律を構成しています。ジャズミュージシャンとして音楽に携わってきた経歴をもつカンノは、1960年代のマイケル・デイヴィスの抑制と緊張感あるインプロビゼーション(即興)性に影響を受け、本作品もジャズの技法を用いて描かれています。造形的なイメージをもたず、また下描きをせずに感情的に一気に仕上げる即興性は、まさにジャズのライブ感に近い感覚。紙の上で生まれた鮮烈な記号は、繊細かつ大胆なメロディーを奏でています。