<<作家・展覧会紹介>>
1984年に武蔵野美術大学大学院を修了後、1986年にNY大学に留学。以降N.Y.に滞在。
94年に帰国後、プリンターの木戸 均と東京に版画工房キドプレスを立ち上げ、工房に関わる多くの作家をサポートし続ける傍ら、自ら制作発表を続け、これまで数々の展覧会を開催しています。
木戸涼子は主にテンペラと油彩を素材とし、絵の具のも持つ発色の美しさやマチエールの微妙なニュアンスを大切に描きます。
瑞々しい色彩に彩られた世界には、柔らかな花々、軽やかな風、そして温かな笑顔などが多く登場し、人物は体を抜け出た魂のように、天や地を自由に行き交っていたりします。
しかし彼女の作品には、まるで夢の一場面に遭遇したかのような既視感や、そこはかと無い安心感が不思議と漂っています。
それは、作家の視点がどこにでもあるようなさりげない日常の中に向けられているからではないでしょうか。そこには多くの人が忘れがちな、たくさんの尊いものが潜在します。
彼女の豊かな感性によって、その一つ一つが見つめ直され、愛情を込めて丁寧に描き出されています。その断片の集積が作品となり、観る人の心に、心地のよい音色となって響くのでしょう。
木戸はそれが、誰にでも共通する「慈しみ」なのではないのか、と語っています。