「デュアル・レター/両面文字」とは、英語と日本語の両方の側面から読むことができる新しい文字の仕組み。日本語の表記法(漢字または仮名)を解体し、バラバラになったその構成要素を同義の英語表現に該当する英語表記(アルファベット)に再構築した文字の新しい姿とも言えます。考案者の遠山由美は、それらの文字を使ってさまざまな題材をもとに創作活動を行い、線と空間の芸術を生み出してきました。本作品は日本の古典である「枕草子」を題材に描いた2001年の作品です。漢字を変形させた仮名という新しい文字体系で書かれた「枕草子」は、遠山が「デュアル・レター/両面文字」を書くきっかけになった重要な文学作品でもあります。制作にあたり、遠山は原文と英訳文を照合しながら、一文字ずつ両面文字に訳したものを左上から横に書いていきました。解読することは難しいかもしれませんが、西洋と東洋の文字の文化を融合させたアートとしては独特の存在感を放つ作品になっています。