「サラマンダー(山椒魚)から見た世界の様々な事象や歴史・文化」をテーマに制作を始めてから10 年、今回の展覧会は井上裕起の創作活動におけるメルクマールとして注目に値する。
今回の出展に際し、井上は新たな素材としての金箔の使用や高度な技術を用いた小品の作成など、意欲的な創作を展開しているが、同時に、「ジイシキカジョウでアマノジャク」な作家の外へ向かう視点が内へ転じる過程で、内省の具現体としてのサラマンダーの魅力を本展では新たに示している。自画像(自刻像)としてのサラマンダーは、とりわけ3.11を目の当たりにした一人の作家の心情吐露の媒体として表れている。全身に金箔を施したGODは作家が感じる不条理を痛烈に体現し、色とりどりに分裂した小さなサラマンダー達の姿はどこかシニカルかつアイロニカルでもある。
このへんてこりんな生物との対話は、まだまだ尽きる事が無いようである。
※作品のタイトルは、それぞれのカラーの頭文字をとっています。