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子供の絵や精神病患者のデッサンをモチーフに作品をつくり続けているドナルド・バチェラーの世界は、イノセントで楽しく、そして同時に内奥に訴えかけてくるものがあります。日本では意外と紹介の機会の少ないバチェラーですが、海外のアートフェアではよく見かける常連。「贈り物としてアートを選ぶならどれ?」という質問をされたなら、ぜひこの作家はお薦めに挙げたい1人です。居間に飾って、お父さんも子供も家族みんなでこの絵に触れて欲しい、そんな一枚。
ドナルド・バチェラー
Donald Baechler
リトグラフ
lithograph
ボルチモアの美大卒業後、ニューヨークに出てクーパー・ユニオンで学んだバチェラーの作品は、子供が描いた下手くそな絵としか見えない。それもそのはず実際に子供の絵を模写し、そのスケッチをもとに制作されるのだ。ほかにもトイレの落書き、精神病患者の絵、古いコミック、中華料理店の紙ナプキンなど、自分では描けそうもない面白い形や、想像もつかないイメージを見つけてきては、スケッチして集めておく。制作はコレクションしたスケッチの中から、慎重にいくつかを選び出して構成することから始まる。一見無雑作に描かれたかに思われる画面は、実は念入りなイメージの選定作業とその配置に十分な時間がかけられているのだ。たまたま出会った人に、何か絵を描いてもらい、それを材料とすることもある。素朴なコミュニケーションとシンプルなものの持つ美、そしてさまざまな組み合わせ。彼の作品が評論家たちからトゥオンブリ、ライマン、そしてラウシェンバーグやシュヴィッタースと比較され賞賛される理由はそこにある。