樋口の描く少年少女たちは、いつか何処かで見かけたことのあるような姿で不思議な空間の中にたたずんでいます。
また表情からは、あどけなさや素直さ、時に悲しげで時にユーモラスな、彼らの心の一片を覗き見る事ができます。
その描写は、日々の移り変わりをもう一人の自分が、どこか離れた場所から、つぶさに見つめているかのようです。
タブローでは油彩と古典的なテンペラ技法を併用しながら、繊細で柔和なタッチや、温かな色合いを生み出しています。
また銅版画では柔らかな色調や、腐食の偶発性によって出てくるマチエールにシャープなエッチングのラインが際立ち、作品の世界感に新たな彩りを添えています。