油彩のリッチなニュアンスを活かして精緻に描きあげるキャンバス画、それが亀井雅文氏の世界です。
しかし、モチーフに選ばれるのは味わい深い風景や人物などではありません。
衣服など日常のありふれたオブジェクト。
それも見栄え良く畳んだり、モデルが着用したりする「ハレ」舞台のモノたちではなく、おもむろに脱ぎ捨てたような脱クライマックスのままを、宝物のように丹念に描きとめています。
そのモノたちがそこにある佇まいの意味を沈思させる写実力だけでなく、そこに長い時間注がれる亀井氏のまなざしの深さに思わずチューニングを合わせてしまうような、不思議な覚醒感を味わえる絵です。