リチャード・タトルは、マルチプル作品として版画に加えて多くのアーティスト・ブック(作品としての本、本の形式をとった作品)を作ってきている。
この、『I Thought I Was Going on a Trip But I Was Only Going Down Stairs』は、1997年にカナダ・トロントのヨーク大学アートギャラリーで開かれた展覧会に際して制作されもの。
アコーディオン状に折られ、10頁になったトレーシングペーパーには、世界各地の観光写真が上段に、展覧会出品作品の画像が下段に、シルクスクリーンでプリントされている。
トレーシングペーパーは、厚紙の表紙・裏表紙に貼り付けられているため、一般的な版画のように額縁に入れて展示することはできないが、淡くプリントされたタトルの繊細な表現をページをめくりながら味わったり、あるいはトレーシングペーパーを引き延ばしてオブジェとして飾ることもできる。