ネズミは2002年以来、ステネットの作品中一貫して重要なモチーフとして取り上げられます。本作品、ネズミの毛流れから爪についた小さな汚れ、指の赤みまで鮮明で、写真にしか見えませんが、実は絵画なのです。「人が安全だと思い込んでいるゾーンから、ちょっとした一突きをしていると思っているよ。それによって普段我々を取り巻いている見落としがちな事象に対して、もう一度考えてみる機会を与えていると思う」とステネットが語る通り、ネズミは一般的に人間に対して不快感を与えますが、同時に昔から民間伝承にもたびたび登場する神聖な動物でもあることに気づかされます。この作品、リアルなネズミが描かれていてぎょっとしますが、よく見るととてもかわいらしく愛らしい姿だと思いませんか?