「誰も写ってないんです」
2000年の出版以来、5万部を越えるベストセラーとして今も圧倒的な人気を誇り、世界のクリエイターに影響を与え続ける中野正貴の写真集『TOKYO NOBODY』の帯を飾った文字である。
とらえたのは、銀座、赤坂、六本木、渋谷、青山、池袋、麻布、秋葉原などの繁華街や首都高速道路など、常に人であふれかえる東京。『TOKYO NOBODY』が他の東京写真と異なっているのは、そこに「誰も写ってない」から。
これはデジタル処理でも、人為的に作ったシチュエーションでもない。
1990年から11年間、徹底的に「誰もいない瞬間」を求めてさまよい、待ち続けたこの一瞬、無人の東京。見慣れたはずの都市が、廃墟のような未来的な風景として迫ってくる。しかしこの一瞬にあなたは決して戻れないのだ。
常に渋滞で車の途切れることのない六本木通り、西麻布での1ショット。