少女たちをメインモチーフにしながら、私たちの日常と空想の行間に横たわっている微妙な情感を丁寧な筆使いで描き続けている、菅野麻衣子氏。絵の人物たちは子どものような身体バランスを持ちますが、それらは菅野氏自身の分身のようであり、老若男女問わず共感できる一人芝居を演じて魅了するように見るものの心へ入り込んでいきます。絵のシーンの前後に長い物語性が感じられ、深読みしたくなるディテールが満載。アクリル絵具によるオーソドックスで鮮烈な塗りと、見るものをワクワクさせるカラー設計、そして着想豊かな構図の掛け合わせにより比類のない世界観を構築しています。
本作は、菅野麻衣子氏の鉛筆画です。繊細な筆致が生む豊かなモノクロのトーンと、少しシュールな少女イメージが絶妙のバランスに。色の制約された世界でありながら、画法の面白さを引き立たせつつ、カラフルなアクリル画と同質の美に輝いています。個展「ハーフの会」(2019年、仙台市・晩翠画廊)にて展示され、好評を博しました。