少女たちをメインモチーフにしながら、私たちの日常と空想の行間に横たわっている微妙な情感を丁寧な筆使いで描き続けている、菅野麻衣子氏。絵の人物たちは子どものような身体バランスを持ちますが、それらは菅野氏自身の分身のようであり、老若男女問わず共感できる一人芝居を演じて魅了するように見るものの心へ入り込んでいきます。絵のシーンの前後に長い物語性が感じられ、深読みしたくなるディテールが満載。アクリル絵具によるオーソドックスで鮮烈な塗りと、見るものをワクワクさせるカラー設計、そして着想豊かな構図の掛け合わせにより比類のない世界観を構築しています。
本作は、菅野氏の近作から自薦の一作です。
「最近観ていた海外ドラマで、母親から『かわいい、かわいい』と甘やかされ、いつの間にか自分自身でも自分の価値をかわいいことだと考えるようになった女の子がいて、そこから発想し制作しました。
多くの女の子は、はじめはただかわいいものが大好きなだけでも、いつのまにか自分自身に『かわいいことはいいこと』と魔法をかけて、その代償に心の穴が少しずつ広がっているのかもしれません。私もやはりかわいいものが好きで、その心の暗い穴も好きです」
(菅野氏のステイトメントより)