版画の手法を最大限に駆使した濃淡グラデーションと驚くほど細かい描き込みに、精神的な深奥を浮き立たせる力があると高く評価される石川真衣氏。本作は、リトグラフにより制作された石川氏の近作です。モチーフは彼女が生活をともにしている愛犬と愛鳥。タイトルの「Sprout」に「芽吹き」の意味が込められ、「共生」をテーマに深い思索が込められています。
「私が一緒に暮らす愛犬と愛鳥との単に出会いを「芽吹く」という言葉で表現すれば簡単に感動することができますが、人間と犬と鳥の異種共同生活では文化の違いやそれぞれの言い分がぶつかり合い嫉妬したり喧嘩したり悲しくなったり、切ない気持ちになることもたくさんあります。でもその気持ちこそが「芽吹き」の果実そのものなのだと思います。大切な家族でなければそのような切ない気持ちも芽生えないからです。」(石川氏のステイトメントより)
風合いの美しいタイ産の丸い手漉き紙に、7層にも重なる版によって作られたマチエールでその「芽吹き」が表現されています。それぞれのシートごとに色合いを変えており、エディション1ずつの希少性があります。こぶりな円形のシートを手にした時の愛らしさも魅力。