イラストレーター・村田なつか氏が初めて制作したジクレー版画2連作のうちの1枚です。森の生き物など、動物たちを題材に独自のメルヘン的世界観で人気が高い村田氏。透明水彩の滲みとマスキング技術、余白を巧みに使う画風が特徴的です。時にはリアルなスケール感のしばりから逸脱して食べ物と動物とを組み合わせるなど、まさかと思わせる、可愛いだけではない着想の面白さにも魅力があります。
本作は、月明かりに抱かれた猫たちのゆったりとした時間を描いた作品です。木々のなかにぽっかり空いた広場の設定は、まさに何事かが起こりそうなファンタジーの泉そのもの。「静かな空気が流れる夜、猫たちの集会所を明るい月が照らします。猫の呼吸や、森の風の音が感じられるように意識しました」と村田氏は語っています。細かく描き込まれた描線、塗りのひとつずつが刷り技術の高度な管理のもとで美しく再現されました。ねこ好きの寝室にぴったりの版画です。