越後しの氏が一貫して追い続けているのは、その時々の自分の心象風景だといいます。念写のようにして日々、彼女の手元から生まれるユニークな「自画像」には、原画か版画かを問わず、詩的な含意の膨らみと民芸品的な可愛らしさがあります。
本作は、越後氏のアクリル画最新作から自薦の一枚。耳もとを装飾するボリューミーな花モチーフは時々彼女が好んで描く画想ですが、実は髪飾りというより耳を覆っているのだそう。「必要以上に音がありすぎる世の中にうんざりする時に描きたくなる」と言います。構図からの津々たるオーラ、細かく描きこまれたディテールの美しさも魅力的です。