越後しの氏が一貫して追い続けているのは、その時々の自分の心象風景だといいます。念写のようにして日々、彼女の手元から生まれるユニークな「自画像」には、原画か版画かを問わず、詩的な含意の膨らみと民芸品的な可愛らしさがあります。
本作は、彼女の個展でも常に絶大な人気を誇る鉛筆画シリーズより、越後氏自薦の新作です。細やかなタッチと階調豊かな濃淡により、彼女のアクリル画や紙版画の世界が、優しい鉛筆画として展開されています。本作はタイトルどおり、夏の音に思いを馳せたもの。太陽が強く照り雨が降った後にメキメキ成長音を鳴らすように激しく生育していく植物たち。そんなイマジネーションを描いています。ユニークな変則シンメトリー感も楽しい一作です。