少女たちをメインモチーフにしながら、私たちの日常と空想の行間に横たわっている微妙な情感を丁寧な筆使いで描き続けている、菅野麻衣子氏。絵の人物たちは子どものような身体バランスを持ちますが、それらは菅野氏自身の分身のようであり、老若男女問わず共感できる一人芝居を演じて魅了するように見るものの心へ入り込んでいきます。
本作は、菅野麻衣子氏の鉛筆画です。繊細な筆致が生む豊かなモノクロのトーンと、少しシュールな少女イメージが絶妙のバランスに。色の制約された世界でありながら、画法の面白さを引き立たせつつ、カラフルなアクリル画とはまた違った筆触の複雑な美しさが進化し続けており、高い人気を誇ります。
2021年4月に、故郷である仙台を離れたことをきっかけに子どもの頃のことを思い出すようになったという菅野氏。本作は、そんな自分の過去の記憶からイメージし制作した「セーラー服シリーズ」の一作です。男の子からの甘いセリフに決して喜ぶだけではない女の子の心境を示唆。漫画的とも言える表現を大きく取り入れたユニークな作品です。