2020年のコロナ感染症拡大・自粛期間のうちに、ふと思い立ち手元にあったペンで模様を描き始めた、という板谷うた氏。それがアーティストとしての起動初日となりました。
黒い顔料インクがペンで運ばれて姿を表す線のひとつずつが、まるで細胞のように画面のなかで形をなし、うごめき、生命を吹き込まれたように存在を主張して見るものを圧倒します。
細密画、ペン画のジャンルで異才はすでに数多く活躍していますが、具象を離れた抽象感覚、内なるエモーションと無意識の世界を融合させることで他にない独自性を見せながら日々成長しつつあり、様々な美術関係者に着目されるようになっています。モノクロなのに彩りを印象づけ、また平面なのに奥行きや動きを感じさせる板谷氏のペン画世界のこれからが大きく期待されています。
本作は、彼女の複雑なペン画世界を正円のなかに展開し融合させた、インパクトの強いハイブリッド感が楽しめる「丸」シリーズからの一作。「進」との連作になっています。