“私は、現代の絵を描く画家になりたかった。
モチーフ選びは、輪郭を借りるだけで特別に何かを表そうとか意味を持たせることはしたくないと思ったのだ。なぜそうなったかというと、自分自身がその様な描き方を望まなかったからだ。直球で何かものに向かい、直接的に風景やら日常の一場面を描く方がそれこそ自分らしいと思った。しかし、幼少期にポールセザンヌの絵を見て「特別だ」と強く感じた。ただの風景画や人物を描く画家にはなりたくないと思った。今でも現代の絵を描こうと画家の探求は続いている。”
絵と向き合う時、私はただひたすらに自身の直感を信じます。気持ちいいと思う形や色、作品のモチーフさえも、全て直感で選び取るのです。
作品のモチーフは、実際に自分の目で見た風景を収めた写真たちから選びます。描きたいと思う風景を描きたいように描く。そうやって1枚の絵が完成した時私の内に生まれるものは、疲労感と充足感、そして何よりも、もっと絵を描きたいという欲求です。私を制作へと突き動かすのは、この直感と欲求なのです。
では、私の原動力が直感と欲求ならば、私が作品制作を通じて表現したいものは何なのでしょうか。自問自答する程に分からなくなりますが、一つ答えを出すとするならば、それは私自身の「魂」なのだと思います。人の気持ちや言葉は目に見えるものではありませんが、絵画という言語を通して私は自身の「魂」を鑑賞者へと訴えかけたいのです。
ある人には、ノイズになるでしょう。またある人には、心地よいものになるでしょう。私は色々なことを想像し、時に不安を抱きながら、それでも自分が信じた方向へと突き進み絵を完成させる他にありません。あの時の記憶、あの時の感覚、あの時の時間は、今この時の一瞬一瞬であり刹那的なものであります。しかし、私はその一瞬一瞬を捉えようとして、心情を揺れ動かしながら絵を描いていくのです。