少女たちをメインモチーフにしながら、私たちの日常と空想の行間に横たわっている微妙な情感を丁寧な筆使いで描き続けている、菅野麻衣子氏。
本作は菅野氏の「SATURDAYS」シリーズからの一作です。「SATURDAYS」とは、彼女がアメリカの画家、ノーマン・ロックウェルの絵へのオマージュとして制作したというユニークなシリーズ。不穏な世情にあって、人なら誰しもが共感し膝を打つような人間生活の哀歓の美しさを大衆に示し続けたロックウェルの作品の真価は今も色褪せることなく、コロナ禍や分断する社会でささくれだった人々の心を癒やしうるものでもあります。この一連の作品ではそのロックウェルの名作の印象や構図の面白さのパーソナルな受けとめをコンセプトとしながら、菅野氏特有のファンタジックな世界を展開しています。
本作は、ロックウェルの有名作「人形つかい」(1932年)を題材にしています。対比して見るとより興味深くご覧いただけるでしょう。個展「SATURDAYS」(2022年、恵比寿・AL)にて展示され好評を博しました。