物憂い表情をたたえた少女たちのポートレートを主軸に作品を数多く発表し続けている谷川千佳氏。細い手足や、優美な曲線の長い髪など、伝統的でファンタジックな少女画の美質を備えつつ、宙を漂うような絵の主人公の視線に滲む彼女自身の深い空想力と、こちらの深層心理と共振するような、かすかな狂気を帯びた作品世界が魅力です。少女画の、特にセーラームーン世代と言われるアーティスト、イラストレーターが多数、厚い層をなしている中にあって、2D絵画の美と、自分自身にしかできない構想の深みを真摯に希求し続ける態度は、各地のギャラリー、ショップで高く評価されています。
本作は、ハロウィンパーティの小冊子の表紙をイメージして描かれました。陽気な祭りであり、死を見つめる陰鬱な祈りでもあるハロウィン。谷川氏はその両面性からイメージを膨らませ、「表裏一体」をテーマに生と死、光と影を描いたといいます。
「蛇は生と死、罪や悪を、白鳥は死を象徴しています。月は不死と再生を表しています。人物が重なって作り出している形はランプをイメージしており、これは「表裏一体」の人物でもあります。仮面はペルソナ的な要素を持ち、人物のポーズは天と地を指差して、その指は時計の針もイメージしています。これらの要素は棺の中に収められており、開かれた棺は再生を表現しています。周囲には天使と悪魔を思わせる装飾が描かれています」(谷川氏のステイトメントより)。
2023年のグループ展「HALLOWEEN MAGIC ?ハロウィンの魔法展-」(京都市・HIRAETH)にて展示され好評を博しました。