物憂い表情をたたえた少女たちのポートレートを主軸に作品を数多く発表し続けている谷川千佳氏。細い手足や、優美な曲線の長い髪など、伝統的でファンタジックな少女画の美質を備えつつ、宙を漂うような絵の主人公の視線に滲む彼女自身の深い空想力と、こちらの深層心理と共振するような、かすかな狂気を帯びた作品世界が魅力です。少女画の、特にセーラームーン世代と言われるアーティスト、イラストレーターが多数、厚い層をなしている中にあって、2D絵画の美と、自分自身にしかできない構想の深みを真摯に希求し続ける態度は、各地のギャラリー、ショップで高く評価されています。
本作は、不安や恐れを象徴する「ヨル」という存在に、ふたりの主人公が機知と想像力を持って対峙する姿を描いた一連のシリーズからの一作。主人公のひとり「ユー」の肖像画として描かれたものです。個展「ヨルがくるけど」(2024年、東京・OPA gallery)にて展示され好評を博しました。