物憂い表情をたたえた少女たちのポートレートを主軸に作品を数多く発表し続けている谷川千佳氏。細い手足や、優美な曲線の長い髪など、伝統的でファンタジックな少女画の美質を備えつつ、宙を漂うような絵の主人公の視線に滲む彼女自身の深い空想力と、こちらの深層心理と共振するような、かすかな狂気を帯びた作品世界が魅力です。少女画の、特にセーラームーン世代と言われるアーティスト、イラストレーターが多数、厚い層をなしている中にあって、2D絵画の美と、自分自身にしかできない構想の深みを真摯に希求し続ける態度は、各地のギャラリー、ショップで高く評価されています。
本作は、Sansiao Gallery HK(香港)での展覧会「HOMMAGE」にて展示された作品です。ギャラリー所蔵のマリー・ローランサンの作品「LE CONCERT」(1926/230×177mm/lithograph)のオマージュとして制作されました。
「マリー・ローランサンの描いた3人のお城の生活・動物たちとのコンサートは優雅なものだったのでしょうか、憂いを帯びたものだったでしょうか。そんなふうに思いを馳せながら、オマージュした作品では3人を自身のキャラクターに置き換え描きました。彼女たちは花を愛で、鳥と歌い、流れ星のリングを指に通します」(谷川氏のステイトメントより)。