おもに森の生き物を題材にファンタジックな水彩画を発表し続けている村田なつか氏。童話本や絵本のワンシーンを思わせる場面構想力は、透明水彩の独特な滲みとマスキング技法とを駆使することで、より洗練された境地に達しています。動物イラストレーションの王道を承けつつ、自然の陰りや発光感まで豊かに表現できる余白の巧みな使い方が印象的。可愛らしいだけではなく、鉱石や食べ物と動物との組み合わせも試みるなど、グラフィカルでシュールな着想の面白さにも特徴があります。

本作は、村田氏のこれまでの作品のなかでも最大サイズのもの。熊本県阿蘇市の大観峰を訪れた際に感銘を受けた風景がテーマとなっており、そこにしばいぬや猫が佇んでいるというシュールな構想。大画面に豊富な描き込みを入れた見応え満点な大作になっています。アクリルリキッドを用いたことでところどころに独特なツヤ感が生まれている点も魅力的。個展「いぬのいるまち」(25年、恵比寿・AL)では会場中央に配置され、好評を博しました。