細腕で丹念にアクリル絵具を運び続けて描き出される煌めきの風景と、そこにたたずむ少女や天使像。それらは彼女自身のアバターであり対話者です。絵の各所へ配される灯火や光のアクセントが特徴的で、時にイルミネーションのようなスケール感で、また時には星の瞬きを思わせる微かな気配となって物語性を増幅します。
高い粘度をもって全体を覆うアンバー気味の彩色は、母胎のように深い心象風景の奥行きを思わせ、印象的に発光する光輪が、そこに生命を宿そうとする祈り、聖なるものへの憧憬の強さとして伝わり見るものの心を打つのです。
童画のようにピュアな感受性をたたえつつ、独特で細やかな技法をもって儚さと普遍性とを併せ持った世界観として描出できる異才によって、さかい氏は美大在学中より注目を集め、卒業と同時に地元仙台市を拠点としながら発表活動を始めました。一貫したコンセプト展開が見込める安定感や、成長見込みが期待を集めている新鋭です。
本作は、彼女の代表作のひとつ。「Independent Tokyo」をはじめ、個展「星をさがして」(’25年、仙台市・ギャラリーウィンドミル)などで展示され、宮城県芸術祭絵画展公募の部で優秀賞を受賞した作品です。彼女自身がかかえる、慢性的な両手の痛みというハンディキャップが主題になっています。画面の中の2人が歩いているのは、空想(絵)の中の世界。
「慢性的な両手の痛みは、絵を描く上で大きなハンディキャップだ。周りと比べ、悩みながら生きてきたが、大学時代にその苦悩を作品へと昇華できた時、痛みに意味が生まれたようで初めて救いに感じた。本作品では、現在の自分が、ハンディキャップを受け入れられずに苦しんだかつての自分自身の手を引き、旅をしている様を描いている」(作家ステイトメントより)