キャンバスから強烈な存在感を放って見るものの心を動かす、狛犬や龍、狐など霊的世界に棲む生き物の図像。丸尾伊代氏の筆が運ぶアクリル絵具は立体的な迫力を伴いながら咲き誇り、巧妙に設計された色彩の豊かさを真鍮や銀の箔の輝きが一層引き立てます。ドローイングペンを用いて加えられる工芸的な描き込みで、モチーフの眼差しは神秘的なオーラを帯びるようです。
丸尾氏は、闘病する家族を癒やしたいとの一心でアートの世界へ飛び込みました。独学で身につけた切り絵技法をもってデビューしましたが、フラワーアレンジメントの素養や切り絵のデザインなども統合した独自の絵画世界確立に取り組み続けています。26年から都内で本格的な発表活動をスタートしたばかり。未だキャリアの浅い新鋭ながら、広い文化的視野と大胆な構図、意外性を伴ったエンターテインメント感覚も光り、今後の成長への期待が高まっています。
本作は、神社の生き物をモチーフとしたシリーズの中の一作です。「静かな眼差し」を通して、目には視えない先祖とのつながりや見守られている感覚を、大地をイメージした緑の龍で表現しています。個展「神使」(25年、世田谷・Atelier T)にて展示され好評を博しました。