本シリーズは、フラットベッドスキャナによって出力されたプリントを「絶対的なモチーフ」と捉え、制作しています。本作のスキャン対象となっているのは、花瓶とそこに挿された生花です。また、本作は連続してスキャンした複数枚のモチーフを用いています。
本作品の制作はフラットベッドスキャナという光学機械を「花瓶とそこに挿された生花」に直接当ててスキャニングし、三次元の存在を二次元の「座標」と「色」に固定することから始まります。その際、スキャナのセンサーバーが直線運動する過程で生じる走査線(ストライプ)は、画面を分割するガイドラインとなり、時に描画の起点として機能します。
私は描画プロセスにおいて、モチーフであるプリントの上に直接油絵具を置いて調色し、その色をキャンバス上の「同一の座標」へ配置するという厳密なルールを課しています。置かれた絵具は筆やヘラによって引き伸ばされ、隣り合う色と繋がれていきますが、そこには人間が扱う絵具の量のムラや、座標の微細なズレが不可避的に生じます。
光学機器が持つ「正確性の高いデジタル情報」を、精度において劣る「人間」が分解・抽出する。この行為によって生じるズレこそが、元の光学的要素を持ったプリントとは異なる、新たな絵画を発生させます。
また、本作はイメージ(図)と余白(地)を明確に分断する構図をとっています。周囲の広い余白は単なるキャンバスの地ではなく、「無装飾の額縁」としての機能を担っており、それによって「絵画が発生している事実」をより鮮明に提示しています。