広大な景色の中に小さな人物が数人いて・・・と言葉にしてしまうと簡単ではあるが、実作品を目にした時には塗り重ねられることで見えてくる色の豊かさや配色の美しさ、人物が小さいことによるかわいらしさについ足を止めてしまう。登山をしているからといって目標への緊張感もなく、プールの中に一人浮き輪を持ってたたずんでいるからと言って孤独に苛まれているようでもない。それよりは自然や色の美しさを追求しているように感じられるところが彼の特徴だろう。作家本人も空間や間、色や形を大切にしていると語っている辺り、とても日本人的な感覚が溢れていて、自然への敬意や人間の無力さを改めて考えさせられる作品である。