プリミティヴな思想に貫かれ、強烈なイメージの喚起力に満ちた画家フランチェスコ・クレメンテ。
彼自身は次のように語っています。
「皮膚は肉体の内側の空間と外側にある共有地だということだ。それは両側から共有される空間のようにも思える」
「私は女性であると信じています。つまり男性は女性であり、女性は男性であると信じているのです。けれども元々これは絵画の最も古いテーマの一つなのです」(※)
本作はこうしたクレメンテの原始的な要素とパトスが凝縮された、存在感あるエッチングといえるでしょう。
一つのユニークなドローイングから、実に多様な表象を想起させることのできる、何度見返しても魅力的な作品です。
※『バイエラーのまなざし:印象派から現代へ・美の系譜100年』 編集:北海道立近代美術館、ハウステンボス美術館、京都市美術館、日本テレビ放送網 発行:日本テレビ放送網 1996