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日本でいつ頃売り出されたものか、50年前ぐらいだろうか、木製のバーに当たりの焼印があると新しいのがもう1本もらえたことを思い出す。何もかもプラスチックが木にとってかわってしまった時代に、今も変わらぬ木の感触を手に伝えてくれる。食べ終えるまでの短い時間だけれど。ありそうでなかった絵、季節感もあるし、色合いも清涼感あるさわやかなオレンジ、昔の日本人が季節に合わせて床の間の掛け軸を架け替えたように、夏のキッチンには冷たいものでもいかが。
ドナルド・バチェラー
Donald Baechler
ソフトグランドエッチングとアクアチント
soft ground etching, aquatint
ボルチモアの美大卒業後、ニューヨークに出てクーパー・ユニオンで学んだバチェラーの作品は、子供が描いた下手くそな絵としか見えない。それもそのはず実際に子供の絵を模写し、そのスケッチをもとに制作されるのだ。ほかにもトイレの落書き、精神病患者の絵、古いコミック、中華料理店の紙ナプキンなど、自分では描けそうもない面白い形や、想像もつかないイメージを見つけてきては、スケッチして集めておく。制作はコレクションしたスケッチの中から、慎重にいくつかを選び出して構成することから始まる。一見無雑作に描かれたかに思われる画面は、実は念入りなイメージの選定作業とその配置に十分な時間がかけられているのだ。たまたま出会った人に、何か絵を描いてもらい、それを材料とすることもある。素朴なコミュニケーションとシンプルなものの持つ美、そしてさまざまな組み合わせ。彼の作品が評論家たちからトゥオンブリ、ライマン、そしてラウシェンバーグやシュヴィッタースと比較され賞賛される理由はそこにある。