草書体のように緩急豊かな流れる線を自在に操る彼は、自らの琴線に触れるモチーフを丁寧に選び出し、線を淘汰し、じっくりと形にしてゆきます。
まるでなにかの結晶が出来上がるのを待つように、自らが「描く」ということを繰り返し、ひとつの作品を作り出してゆくのです。
イメージや色彩の力を信じつつもそれらに頼りすぎない真摯な制作スタイルから生まれる作品は、日本人が古くからもっているであろう美意識を呼び起こしてくれます。
刷師とのコラボレーションで可能性を広げた重野は「イメージしたものをより直接的に表現できた」と言います。
耽美でキッチュな全く新しい世界が繰り広げられています。
2009年7月に『鈴木成一、装丁を語る』を出版されたばかリの装丁デザイナー鈴木成一氏の呼びかけにより、小説の挿絵に挑みました。
著者鳥居みゆきは異彩を放つ芸人ですが、その秘められた文才で綴られた妄想日記により深い魅力をあたえた重野克明の原画です。