作家コメント
動物のモチーフは良く使います。そのものを描くこともあるのですが、人か動物か、はたまた「モノノケ」か、というふうに最近はどんどん変化していきます。耳が生えたり、角が出たり。なかなか思うように変身してくれませんが、ここにあるべきという場所が見つかるまで、試行錯誤を繰り返します。やはり自分の中に理想のフォルムがあるので、そのプロポーションを崩さないように、注意深く創っていきます。 特別に蝶が好きなわけではないのですが、以前読んだ本の中で、「蝶は、あの世とこの世を媒介するもの」という話しが、何故だかずっと記憶の底でくすぶっていました。動物や植物には、昔から言い伝えられた意味があります。西洋では、蝶は「魂」「不死」「復活」というような象徴として良く使われるようです。そんなエピソードが、絵を描く糸口になることも多々あります。 言葉からイメージを膨らませることが多いかもしれません。多分言葉には、ビジュアルの足枷がないから、活字の中では限り無く自由です。本はよく読むほうだと思います。沢山の本から、沢山の絵が生まれました。読んだ本の数だけ、これからも絵が生まれてくるといいなぁと思っています。
宮城勝規
宮城勝規の創作について
インパクトの強いほうに惹かれたり、色んなことを短時間で理解しようとする現代においては、繊細なモノは、見過ごされがちなものでもある。本来、他者に何かを伝えようとすることは、困難な作業だと思う。にもかかわらず、安易に解答を求める風潮があることも否めない。 本当に美しいものは、なかなか言葉にできないし、出来たとしても一言では言い表せない。また、それは、その“一瞬”で過ぎ去ってしまうこともある。 宮城勝規は、そんな中でなかなか伝えにくい、繊細なモノや、人の心のなかに潜んでいる“美しいナニか”を形にしている。 描いているものは、子供などの姿を借りて表出する繊細で異端な“もののけ”達。いわゆる“座敷わらし”のような存在で、子供には見えるが、大人には見えない。 それは、眼に見えないものを見ようとする心情が、価値の有ることだと気付かせてくれる。
Ohshima Fine Art / 大島義之