町田の試みている自身初めての銅版画は、詳細な技法、材料に至るまで、まさにレンブラントの用いた古典エッチング(腐食銅版画)技法そのものです。
固形グランドを直接ダバー(グランドを塗布する為の伝統的な道具)で銅版に塗り込んで行く、この古典技法は、町田の繊細な針(ニードル)の動きを余すことなく銅版に刻みつけます。
そして腐食液につけ込む腐食時間は、いつもわずかに1分たらず。
常識では考えられない超短い腐食時間は、繊細を極めた描線へほんのわずか腐食による凹を作ります。そして、そこには、最低限のインクしか版は、受け付けません。
描線というより、痕跡に近いようなわずかな線の集積を町田は愛おしむかの様に造形へと昇華させて行きます。
画面に描かれる人物は、みな子供のようで、また人形のようでもあり、どこか中性的です。
巨視的なまでにおおらかな表面と、顕微鏡で見たような繊細に描かれた部分の描写との対比が魅力的です。