阪本トクロウの描く世界、それはふと懐かしさを感じる、のどか風景です。
昼下がりの公園にたたずむ遊具、静かな湖面をすすむスワンボート、走行中の車から眺める風景など、モチーフはどれもわたしたちに馴染みのあるものですが、一方で、彼の描く世界は、時が止まっているかのようで、または永遠に続くとも思える、まるで夢の中のような独特の非日常感が漂っています。
せわしなく流れる日々の中、いつもは通り過ぎるだけの場所に、ふと目を向けてみたことが誰にでもあると思います。
視点を変えた瞬間に普段は見慣れたはずの風景が一変し、新鮮なものに見えたり、現実世界から自分だけが離れたような、浮遊感を感じる時、阪本の作品には、そういった場面に生じる心の揺さぶりがあります。