黒田阿未(くろだあみ)氏は、紙版画(板紙凹凸版)を中心とした手法で創作している新鋭です。彼女にとって制作活動は「私とは何者であるのか」という問いかけであり、「制作することで自身と向き合い思考し、確認し、会話している」のだといいます。少女たちの夢や空想、深く濃い耽美を主題にしたその繊細な表現は、数々のコンクールやグループ展で高い評価を得ています。
本作は、世界と己を隔てる境界線で浮かび沈みを繰り返し、曖昧な泡のように存在する少女をイメージしたシリーズ「浮沈」からの一作です。肖像と泡のオーバーラップ感を緻密に構成してみせる版画表現力が見応え十分。2020年の個展「息」(The Artcomplex Center of Tokyo)にて展示されました。