越後しの氏が一貫して追い続けているのは、その時々の自分の心象風景だといいます。念写のようにして日々、彼女の手元から生まれるユニークな「自画像」には、原画か版画かを問わず、詩的な含意の膨らみと民芸品的な可愛らしさがあります。
本作は、彼女の個展でも常に絶大な人気を誇る鉛筆画シリーズより、越後氏自薦の新作。細やかなタッチと階調豊かな濃淡により、彼女のアクリル画や紙版画の世界が、優しい鉛筆画として展開されています。冬を経ていつの間にか植物たちがどんどん芽吹いていく、そんな季節の移り変わりの速さと人の内面とのズレという、普遍的なテーマをもとに描かれています。