幼いときからシナスタジア(共感覚。文字や音に色を感じたり、逆に色に音や味を感じたりする特殊な知覚現象のこと)を持つ石田真弓氏。特に音から色が見える色聴の自覚があり、今も独特な感性を絵や立体で表し、オリジナルピアノ楽曲も発表しています。音楽とシームレスにつながった表現として絵画を用いる稀有で興味深い才能といえるでしょう。
アクリル絵具や油絵具による塗りのつぶれやかすれ、色の重なり合いや模様のようなものたちが作り出すユニークなハーモニーが、彼女の絵の最大の美質です。その時々の彼女自身が置かれた環境や内面世界が手から筆へと転送され、色合いはときにオーソドックスな油画の伝統を思わせるメランコリックな情緒をまとい、特にはストリートアートのようにポップで鮮やかな躍動で見るものの心を震わせます。
本作は、絵の具をキャンバスの上で動かしながら偶然出来た色を少しずつ残して「水」を描いたという作品。「水には色がない。水に映るものの色が漂い、混ざり合って、一瞬一瞬の色を作っては消えていく」(石田氏のステイトメントより)。