本作品シリーズは、室町から江戸期までの日本画の空間構成を木炭などで一度トレースし、それを現代的なメディウムで塗り隠したモノになる。
かつての日本画に於ける空間構成には、その時代の美意識や自然観だけで無く、社会規範や思想までもが内包されていたと考えている。しかし同時に、そのような規範や思想は、現代のグローバリゼーションの中で(前々時代の思想として、)姿を消そうとしている。私はその経緯そのものを作品のモチーフとする為に、このような制作手順をとる事にした。
私は今年、偶然にアメリカ軍の心理作戦部隊の広報映像を見た。彼らの使う「WE COME IN MANY FORMS」という言葉に、あらためて、安全保障への関与と経済を結びつけた日米間交渉の中で、これまでの日本社会を構成してきたあらゆる要素の市場化が進められた事、そしてその中で東洋思想は一度姿を消す以外に無いだろう事を感じた。しかしそれでもいつか、画一化された世界を俯瞰する為の外からの視座として、東洋思想が再び立ち現れる時が来るだろうとも感じている。そのような未来を期待し、本作品シリーズを制作する事とした。