おもに森の生き物を題材にファンタジックな水彩画を発表し続けている村田夏佳氏。童話本や絵本のワンシーンを思わせる場面構想力は、透明水彩の独特な滲みとマスキング技法とを駆使することで、より洗練された境地に達しています。動物イラストレーションの王道を承けつつ、自然の陰りや発光感まで豊かに表現できる余白の巧みな使い方が印象的。可愛らしいだけではなく、鉱石や食べ物と動物との組み合わせも試みるなど、グラフィカルでシュールな着想の面白さにも特徴があります。
本作は、描き下ろしの新作です。「窓を切り取ったような風景が描きたくて、思い立った作品です。緑の借景の中に小さな柴犬たちが集まってくつろいでいる景色を、ずっと眺めている、そんな時間が出来たらと思い制作しました」(村田氏のステイトメントより)。
動物部分をあえて別紙に描いて貼り込むことで、発光感と夢空間の強調を試みている珍しい作品です。