TEMENOS(テメノス)の語源は、古代ギリシアにおいて異教徒から見た「聖域」を指した言葉である。この言葉に対する研究はまだ終わっていないようだが、元々はアクロポリス(神殿の丘)の祭壇に捧げられた生贄を片付ける為の場などを指し、のちに神殿に併設された医療施設や、神に捧げられた土地をも意味するようになるなど、時代によって語彙に変化があたと考えられる。またユング心理学においては、治療をおこなう空間を、外界の影響から保護し、分断された人格を再統合する為の「聖域」として捉え、TEMENOSを使っていた。
10数年前のデモの際、国家と国民の間の最後の盾として出動した機動隊員の中には、東日本大震災直後の原発周辺での活動や、事故が進行する最中の原発敷地内での活動にあたった隊員も居たと聞いた。
社会を構成する個々人が、何かの目的を持って集団として動く時、即ちこの場合のデモ隊と機動隊は、巨視的に見ればまるで分断された人格のようにも見える。デモは、それらの再統合がおこなわれる為の治療空間であったのか、あるいは、片方は聖域であり、片方は異教徒であったのか、今も判らないが、私はこれを描かずにいられなかった。