「都市のレイヤー」を探る《The City Layered》シリーズでは人々やインフラの動きとその建物への写り込みを中心に展開してきたが、遊歩道や街中のショップなどさまざまな写り込みが街には存在する。本作ではそのような比較的身近な写り込みを中心に、また被写体を少し大きくとらえることで、静謐な舞台のなかの動きを主題にした前述の作品よりも細かな都市の表情をとらえる。それは決して壮観ではないかもしれないが、無意識のうちに現れてしまったようなささやかな瞬間に、この街(そして人々)の息遣いが見えてくる。
本作(0003)は、表示されていない駅前のサイネージの画面に写り込んだ街行く人々を捉えている。本来は駅のインフォメーションや商品のプロモーションとして機能する箇所に、街の様子がサイネージのコンテンツとして流れているかのように見えてくる。それは逆説的に、わたしたちの生活のあらゆる場面が消費の対象として切り出される現代の空気感が映し出されているものと捉えられるかもしれない。