THE BOOK OF TEA
この作品タイトルは、岡倉天心の「茶の本」からとった。
岡倉は鎌倉時代から室町時代にかけて「日本の美意識は完成した。」と唱えた。それは南宋が滅んだ際に渡来した技術者や僧侶を通じて日本にもたらされた様々な価値の変化によって完成したというのだ。
しかし私はかつての時代の絵を見る時に、もはや永遠に失われたものを見ているという確信を持っている。
かつての「日本の美意識」は、「社会とは何か?」という概念の延長線上に成立していた。すなわち社会概念の構造の上部に、侘び寂びや、ある種の諦念を存在させたその設計が「日本の美意識」を成立させた。
だが、この20年程の間に起きた変化、グローバリゼーション、あるいは「利益最大化の責任」の中で、もはや規範を外部化させた時代を生きる我々には、当時と同じように「日本の美意識」を見ることが出来ない筈だ。
私はこの経緯を作品化する為に本作シリーズに取り組んでいる。