本作は、初めて制作された菅野麻衣子氏のジクレー版画、3連作シリーズ「Sense Of Wonder」のうちの1枚です。アクリル絵具によるオーソドックスかつ鮮烈な塗りと、見るものをワクワクさせるカラー設計、そして着想豊かな構図との掛け合わせにより比類のない世界観を構築している菅野氏の世界が、刷り技術の高度な技術管理のもとで美しく再現されたコレクション好適品です。個展「お墓のU」(2020年、仙台市・中本誠司現代美術館)にて展示され、好評を博しました。
絵に定着されているワンシーンずつの前後に深い物語性が感じられ、深読みしたくなるディテールがたくさん。「ひとりとして同じ人物はいない」様々な少女たちをその都度に創作上のアバターにしながら、現代に生きる人間たち全てにも関わる、彼女自身の言葉にならない気分やイマジネーション、生命のありかたまでを絵筆で表現しています。
本作ではシートに向き合ったとき、天使に模した少女の息づかいが、ふっとこちらの肌感触として伝わりそうな肉薄感があります。タイトルは、レーチェル・カーソンの有名著書からの引用。「ひとりの時間に得られる特別な感覚」のコンセプトがタイトルに込められました。
額装仕様やマット色は菅野氏自ら選んだ組み合わせになっており、「Sense Of Wonder」シリーズ3作全て並べたときにも美しく映える配色になっています。